研究報告

人参養栄湯は視床下部弓状核のグレリン応答性および非応答性NPY ニューロンを活性化し、シスプラチン誘発食欲不振を抑制する

  • 論文タイトル

    Ninjin-yoeito activates ghrelin-responsive and unresponsive NPY neurons in the arcuate nucleus and counteracts cisplatin-induced anorexia

    Neuropeptides. 75:58-64, 2019

  • 著者

    Chayon Goswami1, 2, 5, Katsuya Dezaki3, Lei Wang1, 2, 3, Akio Inui4, Yutaka Seino1, Toshihiko Yada1, 2, 3, 4

    1. Center for Integrative Physiology, Division of Integrative Physiology, Kansai Electric Power Medical Research Institute, Kobe 650-0047, Japan
    2. Division of System Neuroscience, Kobe University Graduate School of Medicine, Kobe 650-0017, Japan
    3. Division of Integrative Physiology, Department of Physiology, Jichi Medical University School of Medicine, Tochigi 320-0498, Japan
    4. Pharmacological Department of Herbal Medicine, Kagoshima University Graduate School of Medical & Dental Sciences, Kagoshima 890-8544, Japan
    5. Department of Biochemistry and Molecular Biology, Bangladesh Agricultural University, Mymensingh 2202, Bangladesh
  • 食欲不振はがん、うつ病および心不全などの多様な疾病における生活の質を著しく悪化させる。さらに食欲不振はサルコペニアやフレイルの原因となる可能性がある。これらのすべての疾病は医療や社会にとって大きな負担となっている。したがって、食欲不振を抑える手段の開発が待たれるが、現時点で有効かつ科学的根拠のある物質はない。人参養栄湯は12種類の生薬から成る漢方薬であり、食欲不振の治療に使用されてきた。しかしながら、その作用メカニズムは明らかにされていない。ニューロペプチドY(NPY)およびグレリンは、それぞれ、中枢性および末梢性の最も強力な食欲誘発物質である。本研究では人参養栄湯が摂食中枢である視床下部弓状核(ARC)のNPYニューロンやグレリン応答性ニューロンに影響を与えるか否かを検討した。我々はマウスのARCからニューロンを単離し、fura-2 蛍光イメージング法を用いて細胞内Ca2+濃度([Ca2+]i)を測定し、次いでNPYニューロンを免疫組織化学的に同定した。人参養栄湯(1 ~ 10 ㎍/ml)はARCニューロンの[Ca2+]iを増加させ、それらの大部分(80%)はNPY陽性ニューロンであった。この人参養栄湯応答性NPYニューロンの中の一つの集団はグレリンにも応答したが、別の集団はグレリンに応答しなかった。さらに、抗がん剤であるシスプラチンを投与したマウスは摂餌量および体重の低下を示したが、人参養栄湯の経口投与(1g/kg/day)はこれらの低下を抑制した。これらの結果は、人参養栄湯がARCのグレリン応答性およびグレリン非応答性NPYニューロンを直接標的にし、シスプラチン誘発食欲不振マウスにおいて摂餌量と体重を回復することを示している。人参養栄湯がグレリン応答性および非応答性NPYニューロンを活性化する情報伝達が明らかとなったことは、本剤をがんやうつ病、心不全、サルコペニア、フレイル、加齢に伴う食欲不振に対する治療薬として使用するための強力な基盤を与えるものである。

    キーワード人参養栄湯、食欲不振、弓状核、ニューロペプチドY、グレリン、がん
    外部サイトhttps://www.sciencedirect.com/journal/neuropeptides/vol/75/suppl/C

人参養栄湯によるサルコペニアとフレイルの治療

  • 論文タイトル

    Herbal Medicine Ninjin'yoeito in the Treatment of Sarcopenia and Frailty

    Front. Nutr. 5:126. doi: 10.3389/fnut.2018.00126

  • 著者

    Nanami Sameshima Uto1, Haruka Amitani1,2, Yuta Atobe2, Yoshihiro Sameshima3, Mika Sakaki2, Natasya Rokot2, Koji Ataka1, Marie Amitani4 and Akio Inui1

    1. Pharmacological Department of Herbal Medicine, Kagoshima University Graduate School of Medical and Dental Sciences, Kagoshima, Japan
    2. Department of Psychosomatic Internal Medicine, Kagoshima University Graduate School of Medical and Dental Sciences, Kagoshima, Japan
    3. Education and Research Center for Fermentation Studies, Kagoshima University, Kagoshima, Japan
    4. Education Center for Doctors in Remote Islands and Rural Areas, Kagoshima University Graduate School of Medical and Dental Science, Kagoshima, Japan
  • フレイルおよびサルコペニアは高齢者数が増加し続ける日本において、予防医学の観点から最近かなりの注目を集めている。サルコペニアは成長ホルモン/インスリン様成長因子や性ホルモンの年齢に伴う減少に起因する骨格筋の萎縮と定義される。厚生労働省は、フレイルは精神機能および身体機能の障害をもたらしうると報告している。糖尿病や認知症のような慢性疾患はフレイルの基盤をなしていると考えられる。フレイルの進行を予防し、健康寿命を延長することが重要である。漢方薬を含む生薬を用いる医療の現場では「未病」、すなわち発症前状態の存在が認知されており、フレイルにもこの概念が適用できると考えられる。漢方薬には数種類の薬用植物が含まれていることが多いため、食欲の減退や体重減少、疲労、サルコペニアのようなフレイルの症状ならびに不安、抑うつ、認知機能の低下などを改善する可能性があると考えられる。人参養栄湯は最も強力な漢方薬であり、がん患者の緩和医療に広く応用されている。本報告では最近の抗老化研究についてレビューし、フレイルや健康寿命を延長するために使用した場合の人参養栄湯の効果とその作用機序について述べる。

    キーワード生薬、漢方薬、人参養栄湯、フレイル、サルコペニア、食欲不振、加齢、グレリン-ニューロペプチドYシグナル
    外部サイトhttps://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fnut.2018.00126/full

担がんマウスにおける骨格筋機能低下に対する人参養栄湯の効果

  • 論文タイトル

    Effect of Ninjin’yoeito on the Loss of Skeletal Muscle Function in Cancer-Bearing Mice

    Front. Pharmacol. 9:1400. doi: 10.3389/fphar.2018.01400

  • 著者

    Masahiro Ohsawa, Junya Maruoka, Chihiro Inami, Anna Iwaki, Tomoyasu Murakami and Kei-ichiro Ishikura

    1. Department of Neuropharmacology, Graduate School of Pharmaceutical Sciences, Nagoya City University, Nagoya, Japan
  • 日本の伝統的な漢方薬である人参養栄湯(NYT)は病的状態や身体虚弱のための治療薬として使用されている。がん悪液質は進行がん患者に見られる状態であり、進行性の機能障害をもたらす骨格筋の筋肉量減少と定義される。本研究において、我々はNYTががん悪液質における骨格筋機能の低下を改善するとの仮説について検証した。B16BF6メラノーマ腫瘍を移植したC57/BL 6J系雄性マウスでは腓腹筋におけるミオシン重鎖(MHC)の発現低下が認められた。さらに担がんマウスの腓腹筋ではSOCS3、リン酸化STAT3およびAMPKの発現が増加し、リン酸化4E-BP1の発現が減少していた。これらのデータは担がんマウスではアミノ酸代謝に異常をきたすことを示唆しており、これらの変容はNYTによる介入により正常化した。本研究によりNYTはがん悪液質でおこるサルコペニアを治療する新規の選択肢となる可能性が示唆された。

    キーワード人参養栄湯、がん悪液質、インスリン抵抗性、骨格筋、AMPキナーゼ
    外部サイトhttps://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fphar.2018.01400/full

人参養栄湯の摂取による糖尿病症状の改善

  • 論文タイトル

    Improvement of Diabetes Mellitus Symptoms by Intake of Ninjin’yoeito

    Front. Nutr.5:112. doi: 10.3389/fnut.2018.00112

  • 著者

    Shigekuni Hosogi1, Masahiro Ohsawa2, Ikuo Kato3, Atsukazu Kuwahara4, Toshio Inui4,5, Akio Inui6 and Yoshinori Marunaka1,4,7

    1. Department of Molecular Cell Physiology, Graduate School of Medical Science, Kyoto Prefectural University of Medicine, Kyoto, Japan
    2. Department of Neuropharmacology, Graduate School of Pharmaceutical Sciences, Nagoya City University, Nagoya, Japan
    3. Department of Medical Biochemistry, Kobe Pharmaceutical University, Kobe, Japan
    4. Research Center for Drug Discovery and Pharmaceutical Development Science, Research Organization of Science and Technology, Ritsumeikan University, Kusatsu, Japan
    5. Saisei Mirai Clinics, Moriguchi, Japan
    6. Pharmacological Department of Herbal Medicine, Kagoshima University Graduate School of Medical and Dental Sciences, Kagoshima, Japan
    7. Research Institute for Clinical Physiology, Kyoto Industrial Health Association, Kyoto, Japan
  • 糖尿病はよく知られている一般的な疾患であり、世界的にみても最も深刻な社会問題である。様々な種類の薬剤が開発されているが糖尿病患者数は増え続けている。人参養栄湯(NYT)は様々な種類の代謝性疾患を改善するための漢方処方の一つである。しかしながら、これまでに糖尿病に対するNYTの効果は検討されてこなかった。本研究において、我々はストレプトゾトシン(STZ)誘発糖尿病マウスの血清グルコースレベルに対するNYTの作用の解明を試み、NYTの摂取はSTZ誘発糖尿病マウスにおいて、血清グルコースレベルを低下させ、インスリン感受性を高めることを見出した。骨格筋の組織間質液の酸性化はインスリン抵抗性を引き起こすことが報告されているが、NYTの投与はSTZ誘発糖尿病マウスに見られる骨格筋の組織間質液の酸性化をも改善した。さらにSTZ誘発糖尿病マウスの近位結腸ではNYTの投与によってNa+-モノカルボン酸共輸送体(SMCT1)の発現が増加する傾向が認められた。SMCT1は弱有機酸(pH緩衝分子)を吸収する能力を有し間質液の酸性化の改善をもたらす。本研究の観察結果に基づくと、NYTは糖尿病における間質液pHの上昇を介して高血糖やインスリン抵抗性を改善する有用な処方であることが示唆された。この間質液pHの上昇は、おそらく近位結腸で観察されたSMCT1の発現増加を介するpH緩衝分子(SMCT1の基質、弱有機酸)の吸収増加によって起こると考えられる。

    キーワード人参養栄湯、糖尿病、間質pH、インスリン抵抗性、血清グルコース、ストレプトゾトシン(STZ)
    外部サイトhttps://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fnut.2018.00112/full

人参養栄湯はコルチコステロン誘発抑うつモデルにおける行動異常と海馬神経新生を改善する

  • 論文タイトル

    Ninjinyoeito Improves Behavioral Abnormalities and Hippocampal Neurogenesis in the Corticosterone Model of Depression

    Front. Pharmacol. 9:1216. doi: 10.3389/fphar.2018.01216

  • 著者

    Kenta Murata1, Nina Fujita1, Ryuji Takahashi1 and Akio Inui2

    1. Kampo Research Laboratories, Kracie Pharma, Ltd., Tokyo, Japan
    2. Pharmacological Department of Herbal Medicine, Kagoshima University Graduate School of Medical and Dental Sciences, Kagoshima, Japan
  • 12種類の生薬で構成される漢方薬である人参養栄湯(NYT)は、疲労、四肢の冷え、食欲不振、寝汗、貧血の治療に用いられている。近年の報告で、NYTはアルツハイマー病患者の認知機能および抑うつ症状を改善することが明らかにされた。しかしながら、NYTが認知機能障害およびうつ病をどのように緩和するかについてはほとんど知られていない。そこで本研究では、コルチコステロン(CORT)誘発うつ病モデルに対するNYTの効果と作用機序を検討した。NYTは、3種類の行動試験でCORTによって誘発されたうつ様行動を改善した。さらに、NYTは、運動量に影響することなく、Y字迷路および新規物質探索試験の両方において、CORTによって誘発される記憶障害も改善した。さらに、NYTは、マウス海馬歯状回におけるCORT誘発神経幹細胞の増殖抑制および未熟神経細胞数の減少を抑制することも示した。これらの結果は、NYTがCORT誘発性行動異常および海馬神経発生の阻害に対して治療効果を有することを示唆する。

    キーワード人参養栄湯、うつ病、神経新生、コルチコステロン、神経前駆細胞
    外部サイトhttps://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fphar.2018.01216/full

日本の漢方薬である人参養栄湯の多面的作用:細胞および動物モデルにおける実験および臨床研究に基づく科学的エビデンスの蓄積

  • 論文タイトル

    Multifunctional Actions of Ninjinyoeito, a Japanese Kampo Medicine: Accumulated Scientific Evidence Based on Experiments With Cells and Animal Models, and Clinical Studies

    Front. Nutr. 5:93. doi: 10.3389/fnut.2018.00093

  • 著者

    Kanako Miyano1, Miki Nonaka1, Miaki Uzu1, Kaori Ohshima1,2 and Yasuhito Uezono1,3,4,5

    1. Division of Cancer Pathophysiology, National Cancer Center Research Institute, Tokyo, Japan
    2. Faculty of Pharmaceutical Sciences, Tokyo University of Science, Chiba, Japan
    3. Division of Supportive Care Research, Exploratory Oncology Research and Clinical Trial Center, National Cancer Center, Tokyo, Japan
    4. Innovation Center for Supportive, Palliative and Psychosocial Care, National Cancer Center Hospital, Tokyo, Japan
    5. Department of Comprehensive Oncology, Nagasaki University Graduate School of Biomedical Sciences, Nagasaki, Japan
  • 現在、世界的に、特にアジア諸国において、生薬は多様な疾患の治療に使用されており、また患者の生活の質(QOL)の改善にも用いられている。日本では、漢方薬が患者のQOLの改善のために処方されている。12種類の薬用植物から成る人参養栄湯(NYT)は漢方薬の1種であり、患者の疾病からの回復を促進したり、貧血、食欲不振、疲労などの患者を苦しめる多様な症状を改善したりするために使用されている。細胞や動物モデルを用いた最近の漢方薬の科学的研究により、症状改善に対するNYTの多面的な作用を証明することが可能になっている。またNYTを用いた臨床研究は、そのような作用を有するNYTを患者のQOLを低下させる症状の改善に広く使用すべきであることを支持している。

    キーワード生薬成分、漢方薬、人参養栄湯、配合成分、科学的エビデンス
    外部サイトhttps://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fnut.2018.00093/full

人参養栄湯による治療後の重症慢性閉塞性肺疾患患者におけるフレイルの改善:症例報告

  • 論文タイトル

    Improvement in Frailty in a Patient With Severe Chronic Obstructive Pulmonary Disease After Ninjin'yoeito Therapy: A Case Report

    Front. Nutr. 5:71. doi: 10.3389/fnut.2018.00071

  • 著者

    Hirai Kuniaki, Tanaka Akihiko, Homma Tetsuya, Mikuni Hatsuko, Kawahara Tomoko, Ohta Shin, Kusumoto Sojiro, Yamamoto Mayumi, Yamaguchi Fumihiro, Suzuki Shintaro, Ohnishi Tsukasa and Sagara Hironori

    1. Division of Allergology and Respiratory Medicine, Department of Internal Medicine, Showa University School of Medicine, Tokyo, Japan
  • フレイルは慢性閉塞性肺疾患(COPD)を有する患者における予後不良因子である。様々な研究において、COPD患者のフレイルに対する気管支拡張薬を用いる従来治療や栄養療法、呼吸リハビリテーションの効果が検討されてきたが、日本の伝統医薬(漢方薬)の効果を検討した研究は報告されていない。ここに、我々は人参養栄湯を用いてフレイルを治療し得た76歳のCOPD患者について報告する。この患者は複数の気管支拡張薬を処方され、栄養療法や患者教育、呼吸リハビリテーションを実施したにもかかわらず、意図しない体重減少、活力の低下および身体活動の低下を呈していた。患者には人参養栄湯が処方され、治療開始1か月後からこれらの症状は改善し始めた。6か月後、患者はフレイルの改善を認め、筋肉量の増加が認められた。人参養栄湯は、全般的な体力や食欲の改善、疲労の軽減のような身体的効果、および意欲上昇や抑うつ、不安症状の軽減のような精神的効果の両面から治療効果をもたらす。一般に、医師はCOPD患者を気管支拡張薬のような器官特異的治療によって治療してきたが、これらの治療法によって全ての患者の生理的および心理的脆弱性に対処することは困難であった。この症例報告はCOPD患者のフレイルに対する人参養栄湯の有用性を例証している。

    キーワードフレイル、慢性閉塞性肺疾患、人参養栄湯、漢方薬、食欲不振
    外部サイトhttps://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fnut.2018.00071/full